「若いうちの苦労は買ってでもしろ。」
こんな言葉がありますが、
苦労なんて、誰もしたくないですよね。
避けられるものなら、避けたい。
そう考えるのが普通だと思います。
でも。
若い頃に、ある苦労をしたからこそ、
今、しみじみと幸せを感じられる、、、
よくよく考えてみたら、私の人生にも、
そんな体験があったんです。
この記事は、そんなエッセイです。
しばしお付き合いください。
さて。
話は、私が18歳の頃にさかのぼります。
私は、実家から離れて京都の大学に
進学することになり、
これから住むアパートを、
現地にて親と一緒に探していました。
不動産斡旋の方が紹介してくれた物件は、
大学近辺のアパートで、
家賃はエリア内最安の2万7000円。
ワンルーム6畳。
和室。
木造。
ユニットバス。
洗濯機は共同。
駐輪場なし。
築20年。
1階。
西向き。
オートロックはもちろんなし。
実際に内見してみたところ、
よくいえば、
とても昭和レトロに溢れている、、、
悪くいうと、
とても古めかしくて、
築30年は余裕で越えているように思いました。
とはいえ、
当時の私はまだ右も左も分からぬ、
18歳。
学生がどんな物件に住むのか、
その相場もよく分からないし、
この頃にはすでに、
自分の実家が裕福でないことに
気付いていたから、
家賃が安ければ安いほどいいや、、、
くらいの安易な気持ちで、
その物件に住むことを決めたのでした。
さて、早くも話は佳境に入ってまいりました。
結局のところ私は、
大学と大学院の計6年間を、
このアパートで過ごすことになるのですが、
このアパートに住んで、
私が一番つらかったことは何だと思いますか?
ぜひとも考えてみて頂きたいのです。
部屋の間取りが、
テトリスで落ちてくるブロックみたいな形で
使いづらかったこと?
違います。
玄関のドアが老朽化した、
極めて弱いアルミサッシでできていて、
本気を出したら蹴破れそうなほどに
セキュリティが脆弱だったこと?
違います。
窓に網戸がついておらず、
虫除けのために、
それを自作しなければいけなかったこと?
違います。
きちんとした屋根つきの駐輪場がないから、
通学用の自転車がいつも雨にさらされて
すぐにサビること?
違います。
外に置いてある共同の洗濯機を
回していると、
油断した隙に、別の居住者が
私の洗濯物を外に放り出してしまうこと?
そして、それが冬場だったりすると、
放り出された洋服が外でカチコチに凍っていること?
これも違います。
実はですね。。。
意外かもしれませんが、
キッチンの蛇口からお湯が出ないことなんです。
なんだ、そんなことか。。
と思われた、そこのあなた!
あなたはきっと、分かっておられない。
京都の冬って、とにかく寒いんですよ。
それはそれは寒い。
それに、
私の住むアパートは建物自体も老朽化していて、
隙間風がバシバシ吹き込んでいた。
だから、
エアコンをつけようが何をしようが、
私の部屋は極寒です。
そんな寒さに震えながら、
冷水で食器を洗うときの苦痛といったら。。。
毎回毎回、お腹に力が入るんです。
そのくらい意を決して、
冷水に手をつけ、
冷たさ、いや、痛さと戦いながら、
せっせと洗うんです。
早く春よ来い、と願いながら。。。
さて。
大学を卒業してから、
もう10年以上が経ち、
私ももう少し良い物件に
住めるようになりました。
そして、いまだに感動すること。
それが、
キッチンの蛇口からお湯が出る、
つまり給湯設備が整っている、
ということなんです。
いや、ウソのようで、
本当のことなんですよ、これ。
もはや冬場であっても、
私は食器を洗うのをためらう
必要がない。
そして、洗うたびに思うんです。
ああ、お湯が出るってなんて素晴らしいと。
そう。
学生時代に苦労した経験が、
私が幸せを感じるためのハードルを
大きく下げてしまったんです。
その結果、
普通の人が気にもかけないような、
日常のごくごく些細なことで、
私は幸せを感じることができるようになった。
そう考えると、あのときの苦労も、
そこまで悪いものでもなかったのかな、、、
と思っちゃうんですね。
もう一度しろ、と言われたら、
躊躇しますけど笑
さあ、どうでしょうか。
「若いうちの苦労は買ってでもしろ。」
という言葉もあながち間違ってないかも、、、
あなたもそんな気持ちになってきませんか?
P.S.
今、調べてみると、
私が大学時代に住んだアパートは
まだ存在しておりました。
紹介ページをみると、
リノベーションも入っているようで、
現在はきっと住環境が
大きく改善されているだろうと思われます。
少なからず6年間お世話になった、
アパートのオーナーさんの名誉のため、
付記しておきます。。。
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