腹痛の原因を調べるためのドタバタ劇。僕の自尊心よ、さようなら。

「ごほっ!うっふ!ぐふ!ううぅ。。おぇっ。えっ。えっ」

部屋内に自分のうめき声が響き渡る。

管が食道を通り抜けていく。

涙が溢れる。

唾液も口から垂れ流し。

看護師さんが横向きに寝そべる僕の
肩をさすってくれる。

「うん、うん。苦しいね。」
「大丈夫、大丈夫。」
「すぐに終わるからね。」

励ましの言葉が心に染みる。

もっと。

もっと励ましてほしい。

もっと優しい言葉をかけてほしい。

何よりも早く終わってほしい。。。

そう心で願いつつ、
目の前のモニターに映し出された
自分の胃の中の様子を虚ろに眺める。

横に座る医師が指し示す部分に目をやると、、、

穴だ。

穴が見える。。。

 

【シモの話、汚い話を含みますので、耐性のない人、お食事中の方はブラウザバック推奨です。】

■予兆はあった。

会社員として働き始めて3年。

あるとき、腹部に痛みを感じた。

近所のクリニックで診てもらっても、
原因が分からない。

処方された漢方みたいな薬を飲んでも、
治らない。

腹痛は1~2か月おきに周期的にやってきて、
だんだんとその強さが増していく。

痛みが出ているときはお腹を抑えながら職場に通う。
折をみてはクリニックで状態を説明して痛みを訴える。

でもやっぱり原因は分からない。

やがては夜、眠りから覚めるほどの痛みに。

そして、ついに、、、

■本格的に腹痛の原因を調べるため、 市中の大きな病院で「胃カメラ」と「大腸カメラ」を使って 体内の様子を観察することに。

ご存じの人も多いと思うが、
「胃カメラ」は口からカメラ付きの管を挿入し、
胃や十二指腸など(消化管の上部)を観察する。

「大腸カメラ」は肛門から同様の管を挿入し、
大腸(消化管の下部)を観察する。

 

■同時にはできないので、 まず「大腸カメラ」からやりましょうと。

なんでそうなったかは分からない。

とにかく、そういうことになった。

結果的には、これが失敗だったのだ。

初めに「胃カメラ」の検査をすればよかった、、、

でもまだこの時点では気付く由もなく。。。

 

大腸検査をするためには、
まずは大腸をきれいな状態に、
つまり、便が一切たまってない状態にする必要がある。

そうしないと、便が邪魔をして、
腸の内部の様子を上手く観察できない。

病院のいうことには、
検査の日、まず家で下剤をのんで、
排便を済ませた状態で来院するように、とのこと。

で、検査当日、もちろん指示にしたがい
下剤を飲もうとするわけだが、
これが言葉でいうほどカンタンな作業ではないのだ。

何しろ、下剤は液体で1L~2Lある。

しかも、まずい。

アクエリアスを100倍まずくしたような味、、、
とてもがぶがぶ飲めるようなシロモノではない。

でも、仕方ないからまず200mlくらい飲む。

うぇっ。。

顔をしかめる。
ガマンして飲む。

飲むと途端に便意を催す。

トイレにいく。

これを繰り返す。

 

・・・

 

ここで異常事態が起こる。

飲んでる途中にどんどん気分が悪くなってきたのだ。
悪寒がしてくる。

立っているのも辛くなってくる。

鏡をみれば、顔は血の気を失い、まっしろである。

まずい。。。

こうなっては下剤など飲んでいられず、
飲むように指示された全量の半分くらいで断念。

フラフラになりながら病院へ行き、
飲みきれなかったことを医師へ正直に伝える。

病院からの指示を遂行できず、
無念で不甲斐なく、そして申し訳ない思い。

 

■すると、ドクター。 おもむろに口を開く。 「じゃあ、浣腸でいきます。」

一瞬、耳を疑う。

 

え?

浣腸?

 

ドクターいわく、
下剤を飲みきれなかったのなら、
まだ大腸には便がたまっている状態。

下剤がダメならば、肛門に直接薬剤を注入して
排便を促すしかないと。

 

動揺を隠せない僕。

 

浣腸って、小学生のときに悪ふざけでやってた、
あれですよね?

両手の人差し指を重ねて、人の肛門を攻撃する、
あれのことですよね?

あ、その管を肛門に突っ込むと。

なるほど。

それで薬剤を注入すると。

はいはい。

 

え、それを、何?

この看護師のお姉さんが、僕にするの?

 

えーと、、、恥ずかしいんですけど。

 

本気ですか?

 

え?何々?

しかも、浣腸後、便意を催したら、
扉を抜けて20m先にあるトイレを使わなきゃいけないと。

人がわんさかいる待合室をとおり抜けないと、
トイレにたどりつけないみたいですけど、、

あ、そうですよね。

そうするしかないんですよね。

・・・

 

あの、、、恥ずかしいんですけど。

 

戸惑う僕。

しかし、看護師さんをチラとみると、
忙しいんだから、とっとと準備しろ、
とでも言いたげである。

引くに引けない。

ごそごそと準備を始める。

 

初めての浣腸に対する恐怖、、、
それを上回る羞恥心。

 

ベッドに横になるように言われる。
体育座りをするように、膝を抱きかかえるように、
横向きで寝そべりなさいと。

意を決する。

もう逃げられない。

背後から近づいてくる看護師さん。
何やら管状のものをもっている。

お尻に何かが触れる、、、

 

あ。

 

あ、あ、あぁ。。

 

入った。今、入ってる。

 

うぅ。。。

あ、抜けた。

 

は!

 

トイレ、トイレ!

 

急ぎたい。

でも、急いで身体に刺激が加わると
20m先のトイレまでもたない。漏れる。

そろりそろり歩いて到着。

ふぅ。。。

やれやれ。

排便す。

 

看護師さんを呼び出し、便の状態を見てもらう。

恥ずかしい。

でも、これも重要な1ステップなのだ。

 

浣腸→排便→看護師さんによる便のチェック。

これを、便が水のような状態になるまで、
色が茶色→透明になるまで繰り返す。

 

のだけど。。

 

ここでまた異常事態が発生する。

上記のステップを3周くらい、
繰り返しただろうか。

 

便の状態をみて、看護師さんがいう。

「なかなか、きれいにならないですね。」

 

どうも、飲んだ下剤の量が少なかったせいか、
浣腸を使用しても、
ちょっとやそっとですべての便を出し切るのは難しいようなのだ。

■ドクターストップ。

大腸検査をひとまず諦め、

別の日に、まずは胃カメラを実施することにしましょうと。

不甲斐なさで胸がいっぱいになる。

僕は何をしていたんだ。。

あれだけ恥ずかしさに耐えて、こんなにがんばったのに。。

 

■そして、冒頭に戻る。

胃カメラを飲むのは苦しかった。

でも、胃に穴が空いていることはすぐに判明。
それが今回の腹痛の原因であることも分かった。

カメラを含んでベッドに横たわりながら、
原因が判明した安堵とともに思ったこと、、、

 

おいーーーー!!

 

なんだよおおおおおお!

 

あの下剤と浣腸はなんだったんだよおおお!

 

やる必要なかったじゃねぇか!
よおおおおおお!

 

いや、しょうがないよ?

胃と大腸のどっちに原因があるか分からなかったんだから。

だからまずは大腸から検査しようとした。問題ないと思うよ。

 

でもさ。。。

 

恥ずかしかったんだぞぉ。。。うぅ。

 

レディに浣腸されて、
皆が見ている待合室を抜けてトイレに向かって。。。

うぅ。。

うわぁーーーん。。

 

僕の自尊心を返せ!返せよおおお!

 

■後日。

胃カメラを挿入したときにとった組織片の
検査結果を医師から聞く。

すると、胃に穴が開いたのは、
ピロリ菌なる菌のせいで、こいつが悪さをしていたらしい。

除菌のプロセスは確立しているらしく、
後は錠剤を飲むだけでよいとのこと。

 

なんでも、この菌は井戸にいたりするらしく、
医師がいう。

「井戸水、飲んだことあります?」

いや、飲むかい!

僕は20代だぞ?戦後を生きた人間じゃないんだぜ?

と心の中で突っ込みつつ、
ともあれ、これで全てが終わった、、、

あとは薬を飲むだけでいいんだ、、、

と心から胸をなでおろしたのでした。

 

いやはや、
原因調査からピロリ除菌にいたる、すったもんだのドタバタ劇。

皆様も腹痛には十分にお気をつけくださいませ。

fin

p.s.

なぜ、この話を思い出したかというと、
来週にピロリ除菌の経過観察のために胃カメラを
飲むことになったからなのです。

そうそう。

今は胃カメラも口からでなく鼻から挿入したり、はたまた
軽い睡眠薬などを飲んでからやったり、、、
というように当時(8年前)よりカンタンに、
身体的なストレスの小さい状態でできるようになっているそうです。

大腸カメラはどうなんでしょうね。
分かりませんし、できることなら、僕はもう生涯やりたくないのです。

fin

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