僕らが働く理由、働かない理由、働けない理由(稲泉連著)

自分にとって大切な本であるほど、
こうして記事にするのはなんだか照れくさい。
それに、自分に与えた影響の大きさを
ちゃんと言葉にできるとも思えない。
適当な記事を書くのは著者にも失礼な気がする。
でもやっぱり、書きたいので、書く。笑

 

疑いようもなくぼくの人生に大きな影響を与えた本。

この本を書店で見つけたときのことは、今でもはっきりと思い出せる。
当時、ぼくは大学生で一人暮らしをしていて、実家に帰っていた。
そこで近所の書店で、この本の文庫本が平積みされているのを見つけた。

そのころのぼくは人生に悩んでいた。今もだけどね。笑
自分に対する自信なんか、いつだってなかった。
自分と同じように葛藤しながら生きている人がこの世界に存在することを
確認したかった。話を聞きたかった。
それで、この本を手に取ったはず。
夢中で読み、それから15年以上たった今でもときたま読み返す。
あの時買った文庫本は、売ることも捨てることもなく引っ越しのたびに持ち運んでいる。
そのくらい、自分にとってとてもとても大切な本。

 

この本は、作者が、悩み、もがいている若者にインタビューにいき、そこでのやりとりをまとめている。
類書と違うのは、作者もインタビューされる人もだいたいが20代ってことだと思う。
だから、当時20歳の自分に文章がぐいぐい沁み込んできた。
作者の文章力のおかげはもちろん、
自分が登場人物に共感できる年齢であったこともすごく大きいと思う。

 

インタビューされている人、すべてが印象的なのだけど、
特に印象に残っている人は有田淳。
インタビュー当時の彼は32歳。
バイト先の塾で、運営を任されることになり慶応大学を中退。
塾経営が軌道にのるも、何をやっても虚しい日が続き、
葛藤する胸の内が描かれている。
それで彼が語る。
医学を学んでみたい気持ちになったんだと。
肉体の精神の境目が知りたくなった。
今から医学部に入るために勉強をしているんだと。

 

これを読んだとき、
ぼくは有田をとてもカッコよく思った。
当時、まだリカレント教育、学び直しなんて言葉がなかった。
大学を卒業して就職したら、
その職を一生続けていくのが当たり前だった。
でも彼は違った。
20代を経営、遊びに全力で取り組み、
やりたいことをやりつくしたうえで、
人生に悩み、自分が改めて進みたい道を悩んで悩んで決めた。
その年齢で医学部に入りなおすのなんて、とても大変なこと。
それでも、また受験のための勉強を始めた。

 

そんな道もあるんだ、って思った。
大学でて就職して終わり。
それだけじゃないんだって。
一本道じゃなくていい。
人生に迷ったら、別の道を選択してもいい。
それこそ有田のように、
普通の仕事に見切りをつけて医学部に入り直して、
医師になったっていい。
人生は、自分が思うより自由なのかもしれない。
そう思った。
肩の緊張が少しほどけたみたい。
しかも、彼は32歳からそれをやろうとしている。
一般的にいえば、家庭をもって子供がいて、落ち着かないといけない年齢。
でも、彼は、その年齢からまた、まったく別の道へ進もうとしている。
そんなのもアリなんだって感じた。

 

でね。
ぼくは今、医学部にいる。
34歳で大学に入りなおして、医師を目指してる。
まさに有田が夢に描いた人生を、
ぼくは歩んでることになる。

 

彼が今、どこでどうしているか分からない。
そのあと、医学部に入ったのか入らなかったのかも分からない。

 

ただ、ぼくは、彼の存在を知って、
社会人を経て、医学部に入りなおすってパスもありなんだな、と思えた。
そうやって人生を変えようとする人がこの世界に存在することを、
実体をともなって感じることができた。
その影響はとても大きかったように感じる。

自分が人生に悩んだとき、
医学部に入りなおすって選択肢が候補の一つに浮かんだ。

その意味で、この本が、有田の存在が、ぼくの人生を変えたといったら、
言い過ぎではあるけど、少なからず影響しているといえると思う。

 

でね。

もう一つ。とても印象深いエピソードがあって。
有田が小さい頃に、
塾の先生に言われたっていう言葉。

「食欲、性欲、そういう原始的な欲望をすべて満たしたうえで、
そのうえにある知識欲をもとめていけば、
学問に関して成功するよ。」

これ。
なんかね。
自分にすごく響く。今でも。

ここからはもう自分なりの勝手な解釈。
いろいろな欲を我慢して、
学問してもダメなんだって。
学問だけじゃない。
仕事も、人間関係も。

基本的な欲望、、、

おいしいものを食べたい。
いい服を着たい。
めちゃくちゃ魅力的な異性と付き合いたい。
お金が欲しい。

そういう衝動がない人はないでいいけど、
少しでもある場合は、
まずそれを満たさないといけないんだ。

満たして、気が済んで、、そしたら、
ようやく、学問にも仕事にも集中できる。

自分が満たされて初めて、
人にも優しくできる。

ぼくはそう解釈した。

 

実際、これまでみてきた、
大学教授とか、会社の偉い人とかって、
ガマン、ガマンでそこまで上り詰めた人って
あんまり見なくて。

英雄、色を好む、というけれど、
性欲とか、その他、食欲とか、
そういうものをうまいこと満たしながら、
学問やら仕事やらに邁進してきた人が多い気がしていて。

つまりね。
これを今の自分にあてはめるとね、
今、自分に必要なのは、
基本的な欲望を満たすことなんだ。

あらゆる欲望を直視して、諦めずに追い求めること。
気が済むまで、やりたいこと、したいことをやりつくすこと。

そうして欲求が満たされて初めて、
社会的に成功する土台ができる。

うん。
だから今は、とにかく遊びたいと思う。笑

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