そうです。
魔女の宅急便のキキです。
つい先日、なんの気なしにテレビをつけたら金曜ロードショーをやってましてね。
そんなに真剣に見るつもりじゃなかったんですけど、一度見始めたら、のめりこんじゃって。
結局、全部、みちゃったんです。
2時間。
みっちりと。
魔女の宅急便なんて、これまで何度みたんだろう。
そして、不思議なことに、一度みてからしばらくたつとストーリーを忘れる。笑
キキがおばあさんの作ったパイを運ぶシーンも、
宅配を依頼されたクロネコの人形を森に落とすシーンも、
全部忘れてる。
だから、何度みてもおもしろい。
新鮮な気持ちで楽しめる。
でね。
ぼくは魔女の宅急便をみると、必ず、泣いてしまうシーンがあって。
それは、キキが魔法を使えなくなるところなんです。
これまでは当たり前のように、黒ネコのジジの声を聞くことができた。
ほうきにのって空を飛ぶこともできた。
キキにとって、魔法を使うってのは、意識せずとも、自然とできることであって、そのことになんの疑問ももつことがなかった。
でもね。
ひょんなことから、その魔法を使えなくなるんですよね。
ひょんなこと、ってのが何だったかを、わたしはもう忘れてしまったんですけど、
なんにせよ、何かをきっかけにして魔法を使えなくなる。
これ、もうアイデンティティーの崩壊ですよね。
魔法を使えるからこそ、自分は魔女として生きてこれたし、生きていける。
それに、ほうきにのって空を飛べるからこそ、宅急便というビジネスも成立した。
それが、魔法を使えなくなったら、もはや、魔女ではないし、ビジネスも成り立たない。
自分を自分たらしめているものが、魔法を使える、ということであり、それが出来なくなったら、もはや自分が自分でなくなってしまう。
そのことで、キキは焦るんです。本気で。
どうしよう。どうしよう。
これまで当たり前にできたことが、なんでできないんだろう。
自然と魔法を使えていた頃、わたしはどうやって魔法を使っていたんだろう。
このまま一生、魔法が使えなかったらどうしよう、と。
ああ、もう涙が止まらない、そのくらい、焦燥感、絶望で胸がいっぱいになる。
ぼくが、このシーンで泣けてくるのは、キキの気持ちが分かるからなんです。
強烈に感情移入してしまうから、といってもいい。
というのも、ぼくも同じことを経験したんです。
高校時代に。
といっても、もちろん魔法が使えるとか、使えない、とかの話ではない。
ぼくの場合は、
魔法が使えなくなった、のではなくて、
友人を作れなくなったんです。
どういうことかっていいうとね。
ぼくは中学校時代、勉強が得意で、自然と目立った。
成績のいいことを自慢したりせず、周囲に合わせてニコニコとしていれば、それだけで、周りの子が近付いてきてくれた。
ぼくはいつも人の輪の中にいて、笑ってた。
この頃、ぼくは、友達を作ろうなんて、意識することもなく、人に囲まれていたんです。
友達なんて自然にできるものだ、と本気でそう思ってた。
友人が作れないと悩んだこともなかった。
でもね。
進学校の高校に入学するとね。
周りも自分と同じくらい勉強ができる。
すると、ぼくはもう普通の人なんです。
特別に勉強ができるわけでもない。
運動はどちらかといえば苦手。
たちまち、周囲の人間に埋もれました。
中学校と違い、周りより特別に秀でたものをもっていない自分。
こうなったとき、ぼくは、この状態から、友達を作る方法がわからなかったんです。
相手から近づいてきてくれる、のではなく、
自分から友人を作る、ってどうしたらいいんだろう。
友達って、どうやって作るんだろう。
あれ?中学校時代、ぼくは友人をどうやって作っていたんだろう。
友人って、自然にできるものじゃなかったっけ?
あの頃は、当たり前に友人を作れていたのに、今のぼくは、なんで友人が一人もいないんだろう。
なんでいつも一人ぼっちなんだろう。
周りは友達とあんなに楽しそうに過ごしているのに、なんで自分は同じようにできないんだろう。
それは自分に魅力がないから?
自分の何かがおかしいから?
この心境ね。
魔法が使えなくなったキキと一緒なんです。
あの頃、当たり前にできたことが、今できない。
キキは魔法が使えなくなった。
ぼくは友人を作れなくなった。
そのときの焦燥感、葛藤、絶望は、同じように思うんです。
どうしよう。どうしよう。
高校時代のぼくも、まさにそんな感じでした。
どうやったら友達ができる?
何をしたらいい?
そんな悩みで頭がいっぱいで、ついにぼくは、高校時代をとおして、ほとんど友人らしい友人を作ることができなかった。
人生の中でも、もっとも暗い時代。
それが高校時代です。
だからこそ、キキちゃんに感情移入してしまう。
辛いよね。
苦しいよね。
がんばれ。
絶対、魔法、使えるようになるから。
諦めるな、って、全力で励ましてる自分がいる。
最後はキキも魔法が使えるようになる。
ここでも、ぼくはまた涙してしまう。
苦しみ、焦燥、葛藤、絶望を乗り越えて、また空を飛ぶ。
なんて美しいんだろう。
最後は、ほうき、でなく、デッキブラシで空を飛ぶのもとてもいい。
がむしゃらでいいんだって。
不格好でもダサくてもいいんだって。
こぎれいにすましたままでいるな。
全力を出せよ。
鼻水たらしてでも、どれだけ無様でも、目の前の問題を意地でも乗り越えていけ、って。
そんなメッセージを感じる。
ぼくも飛びたいな。
キキみたいに。
友達をたくさん作って、人生を思い切り楽しみたい。
いまだに友達を作るのは苦手だよ。
でも、今からだって遅くない。
ぼくにだってできるはず。
そうでしょう?
コメント