医局は大企業に似ている。

ぼくは今、ドクターになるべく、
大学の医学部にいるのですが。

いまいち、分からなかったんです。

医局というものが。

医学生として生活していると、
よく聞くんですよ。

医局ってワード。

当初のぼくの医局のイメージは、

・医師たるもの、所属しておく方がいい。
・大学で学位(博士号)をとるためには、所属しないといけない。
・働く場所は医局によって決められちゃう。

って感じでした。

正直なところ、すごく漠然としたイメージしかなかった。

でもね。

つい最近、まさにその大学の医局の方と
ゆっくりお話する時間がありましてね。

その先生とお話して、
だいぶ医局のイメージがクリアになってきた。

なもんで、この記事にちょっと整理してみようと
思った次第です。

 

その先生から聞いた言葉で、
すごく自分にしっくりくるものがあって。

それは

「大学医局とは大企業みたいなもの。」

っていう言葉。

それに続けて、

「関連病院は子会社。」

って言葉を続けられた。

ぼくね。

この比喩がどんぴしゃにハマってね。

これで、医局ってもんが何かが分かった気がした。

自分が医学部に入学する前、
実際に大企業に勤めていたから、より腹落ちするとこがあったと思う。

 

この比喩の意味を解釈する前に、まず前提からいきますと、

各県には、だいたい医学部を有する大学が1つあり、
附属病院をもっています。

で、その附属病院には、

消化器内科、とか、泌尿器科とかの各科がありまして、
それぞれの科は、教授を頂点とした組織を作っており、
それを医局とよぶ。

教授から始まり、准教授、講師、助教、さらにその下には
医局員がいる。

医局の役職と、企業組織の対応を考えてみると、
おおむね、以下みたいになりそう。

教授→社長
准教授→局長
講師→部長
助教→課長
医局員→平社員

で、助教以上の人、すなわち、企業でいうところの課長以上の人を、
「スタッフ」とよぶらしい。

つまり、医局を運営していく側の人たちになる。

 

でね。

大学医局が大企業みたいなもの、といわれるゆえん。

その1.医局(大企業)は関連病院(子会社)をもつ。

関連病院は、支店でなく、子会社なんです。

ここ、大事なところです。

支店だったら、並列、同列な組織ですけど、
子会社になると、下位組織です。

そこには明確に序列があります。

医局が上で、関連病院が下。

こう考えると、

医局の頂点である教授は、

単に、大学の附属病院の長であるだけでなく、

いくつもの関連病院を含めたうえでの長ってことになる。

だから、やっぱり偉い。

 

その2.医局間の異動は難しい。

大企業から大企業への転職って、
まあ可能ではあるけど、
大変じゃないですか。

能力があって、キャリアアップしたくて、
っていう人は、もちろん可能ではあるけど、
その転職活動はものすごいエネルギーがいる。

これは、医局から医局に異動するのも同じ。

例えば、A県の大学の医局に所属していた人が、

結婚するなり、なんなりのライフイベントによって、

B県の大学の医局に所属したいとする。

でも、これは、かなり大変。

不可能ではないけど、
すごくエネルギーがいることで、
おいそれと簡単に行えることじゃない。

だから、医局選びは、将来のことまで考えて、
慎重にやんないといけない。

 

その3.優秀な人ほど医局内で出世する。

医局に所属したとき、
まず医局員から医師人生がスタートします。

で、そこから、修行のために関連病院に出向したりするのですが、

優秀であればあるほど、医局内の「スタッフ」として
とりたてられていくことになります。

それはつまり、
大学の附属病院を勤務地として、
医局員から、助教、講師と、出世の階段をのぼっていくってことです。

じゃあ、

自分よりも優秀な人がいたら?
出世の階段をのぼることができなかったら?

その場合、関連病院に行くことになります。

そう、大学医局にとっては、関連病院とは子会社のようなもの。

語弊をおそれずにいえば、
関連病院とは、医局の天下り先であり、

医局内で出世競争に敗れた、あるいは出世を諦めた人は、
関連病院に院長やら部長といった役職付きでおさまることになります。

これはもちろん片道切符で、

関連病院に異動になった人が、また大学の医局スタッフに戻ってくるってことは
あまりない。

このあたりは、一般的な大企業と子会社の関係、そのまんまですよね。

優秀な人は本社で出世し、行き詰まったら子会社へ役職付きで転籍になるのと同じです。

 

その4.医局のスタッフは偉い。

大学医学部はたいてい各県に1つだから、
医局スタッフとは、その県を代表する大企業の社員みたいなもんです。

子会社である、関連病院の医師からは、
尊敬の対象になりうるでしょう。

ちなみに、関連病院の幹部職は、
医局のスタッフの天下り先であるため、

仮に関連病院に就職して、the叩き上げみたいな感じで、いくらその病院に長く勤めたところで
病院幹部になるのは難しい。

ガラスの天井が存在する。

病院幹部を目指すなら、まず、医局の中で偉くなる必要がある。

 

その5.医局に所属しない医師は、野良の医師。

もちろん、医局に所属しないっていう生き方もある。

その場合は、病院に直接雇ってもらう形態をとる。

これは、大企業の子会社に直接、就職するようなかたちになる。

もちろん、すでに書いたとおり、
病院の幹部職は、医局のスタッフが天下ってくるので、
いくらがんばっても基本的にそこまで偉くはなれない。

で。

医局員からすれば、非医局員の医師は、
野良、というか、身元保証のない医師。

医局員を会社員とすれば、
非医局員はフリーランス。

医局に所属していれば、
その人の経歴も、実績も、評判も、
すぐにアクセスできる。

フリーランスの人は、組織に属していないから、
その人の本当のことをつかみにくい。

だから、非医局員の病院への就職活動や転職活動では、
面接官の心象が悪くなる。

 

おおざっぱにこんな感じだろうか。

医局のネガティブな面が多くなっちゃったキライがあるけれど、

教育機関としての極めてポジティブな面もあり、

自身のなりたい医師像に向けて、学位をとったり、留学したり、手技を覚えたり、
っていうのを、サポートしてくれる。
自分のレベル、ステージに応じて、
それに適した病院に出向させてくれたりもする。

これ、すごく重要なところ。
そんないいところもある。

うん。

初めは、医局というものがなんのこっちゃ分からなかったけど、
こんな感じで、少しずつ理解できるようになってきたのです。

まだ、誤って理解していることも多いとは思うけれど。

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