おばあちゃんと立ち食いそば

ぼくがまだ小学生くらいの頃。

2つ上には兄がいて、

下には年の離れた弟がいてね。

ってなると、

どこかに出かけるとか、

家族で外食するとかってなるとね、

いつも兄弟が一緒なんです。

そりゃそうですよね、
兄弟のなかで、自分だけ連れ出されるとか、
ってことはあまりない。

 

そんななかでね。

あるときね、おばあちゃんが、ぼく一人を連れて、
出かけてくれたんですね。

なんでそうなったのかっていう
経緯はぜんぜん覚えてない。

他の兄弟たちが、用事で外に出かけていたのかもしれない。

両親もどこかへ行ってたのかもしれない。

まあ、なんにせよ、

おばあちゃんは、確か自転車にぼくを乗せて、
家から5分くらいのとこにある最寄り駅へ。

今はもう改装された、ちっさいちっさい駅で、
当時、そこに併設されてた立ち食いそばに連れてってくれたんです。

 

こんなふうに、外で外食することなんかほとんどないんですよ。

おばあちゃんは料理上手だし、

基本的に、家で皆でごはんを食べるのが日常。

でも、そのときは、なぜか、ぼく一人を連れ出してくれたんですね。

 

聞くところによればね。

おばあちゃんは、昔、その駅から電車で仕事に出かけていて、

その立ち食いそば屋さんが好きだったらしく。

ってことで、
久しぶりに無性に食べたくなったのかもしれない。

それで、ぼくを一緒に連れていってくれたのかもしれない。

 

まあ理由は分からないけどね。

そのそばがね。

もうね。

めっちゃくちゃに美味しかったのを覚えているんです。

だしの香りもとてもいい匂いで。

もう、とにかく美味しかったんですよ。

小学生ながらに。

 

でね。

立ち食いそばといっても、

ぼくはその頃、まだ小学生だから、台に背が届かないわけです。

だから、大人の人が荷物を置く用の、少し低いところにある棚に
丼をおいて食べたような気がする。

 

ぼくは今でも、立ち食いそば屋をみるたびに、
それを思い出すんですよね。

あのいい香りと、美味しさと。

そしておばあちゃんを。

それとね、今になってみるとね、

他の兄弟にはない、ぼくだけがもつおばあちゃんとの思い出ってことに、
少し優越感めいた感情もわいてくるんです。

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