あったかい手

手のひらが温かい人は、心が冷たい。

こんな話、聞いたことありませんか?

ぼくは、ある。

そして、何を隠そう、ぼくの手はあたたかいのです。

 

なもんで、小さいときなんて、よくバカにされたもんだ。

「うわー!手のひらあったかーい!」
「じゃあ、心が冷たいんだー!やーいやーい!」

ってな感じで。

周りからそう言われると、
けっこう真に受けて、自分は心が冷たいのか?

と真剣に考えこんだりしてしまって。

自分は人よりも薄情なのかもしれない、

とか、

周りよりも自分を優先してしまうところがあるかもしれない、

とか、思ったりしてしまって。

素直でしょう?笑

 

そんなわけで、
幼少期のぼくは、手があたたかい、ということが、
少し恥ずかしい、というか、
周りに知られたくない、というか、
コンプレックス、というか、

そんな感じになっていたのです。

手のひらが温かい人は、心が冷たい、

という話を聞くたび、

自分が責められているみたいだった。

心が冷たい、と断罪されているみたいだった。

そして、少し悲しくなった。

 

でもね。

あるときね。

おばあちゃんがね、手をつないだときに言ってくれたんです。

「ユウちゃんの手は本当にあったかいね。」

って。嬉しそうにね。

おばあちゃんの手は子供でも分かるくらいに冷たくてね、

そのおばあちゃんが、ぼくの手を本当にありがたそうに、

両手で握ってすりすりするんです。

寒い冬の日に、コタツの中で手をすりすりするみたいにね。

ぼくの手を握って。

それがね。

とても嬉しかったんです。

ああ、手、あったかくていいんだって。

だって、こんなに喜んでくれる人がいるんだもんって。

 

このときだけじゃない。

本当に、ことあるごとに、おばあちゃんは、ぼくの手が温かいことを
褒めてくれた。

いつも嬉しそうに。

 

だから、今のぼくはね。

パートナーと手をつなぐときだって、もう堂々としたもんですよ。

ほら、手をつないでごらんなさい。

ほら、あったかいでしょう。

いい手でしょう?って。

これね、ぜんぶ、おばあちゃんのおかげ。

ぼくの手は、コンプレックスじゃなく、自信になった。

ありがとね、おばあちゃん。

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