あれは、ぼくが18歳のとき。
第一志望だった大学に合格して、
入学できた。
本来だったら、
サークルに入ったり、
アルバイトを始めたり、
新しい友人ができたりして、
希望に満ち溢れている時期、、、のはず。
でもぼくは違った。
もうすでに別の記事にもしているけど、
ぼくは、高校時代に友達がいなかった。
正確には一人だけいたのだけど、
ここでは、それについては触れない。
高校一年生のとき、一生懸命、周りの人に
声をかけたけれど、
誰とも仲良くなれず、
そこで心が折れてしまった。
と同時に、自分を悲観的にみるようになった。
自分に友達ができないのは、なぜだろう。
周りの人はあんなにも自然に友人を作り、
楽しそうに生活にしているのには、なぜ自分は?
自分は何かが人と違っていて、
それが理由で、周りから避けられているのか?
そんなふうにどんどん自分を疑うようになって、
自分がおかしいと考え始めると、
思っていることや感じていることを口に出すことが
できなくなっていった。
自分のおかしさを、ばれちゃいけない。
隠さないといけない。
自分に近づいてくる人がみんな、
自分の秘部を暴き出すような存在に感じられて、
それをさせまいとずっと緊張していた。
会話も、その場を上手くやり過ごすためだけの言葉しか口にしなかったし、
学校にいる間、人と一緒にいる間、ずっと心が休まらなかった。
これが3年間。
でね。
大学に合格したとはいえ、
この、自分も人も疑う気持ちが抜けきるはずもなくて。
大学入学直後、部活動とかサークルとかの勧誘があったけど、
そのどれも入ることができなかった。
だって、集団に所属するってことは、また高校生活を繰り返すってこと。
どうせまた友達だってできないし、
自分のおかしさが周囲にバレないように、
ずっと緊張していないといけない。
そんなの絶対にイヤだった。
だから、大学一年の初めの頃なんて、
ただ学校にいって、授業に出るだけだった。
幸い、工学部だったから、クラスの中でグループを形成しようとする力は強くなくて、
一人でいても、そこまで浮くことはなかったし、
自分と似た人、それはつまり、
対人関係をあまり得意としない人を見つけた。
運のいいことに、その子とは話もしやすくて、
お昼ごはんを一緒に食べるくらいになれた。
ただね、少し話せる人ができたからいいか、、、
とは全然思えなかった。
この状態で、これから、生きていくことができるんだろうか、
っていう不安がずっと頭の中にあった。
だって、大学も高学年になれば、研究室に配属しないといけない。
さらに進んで、社会人になれば、会社に所属しないといけない。
ある組織に所属することを考えると、
あの忌々しい高校生活の繰り返しが連想されて、
自分の将来が真っ暗に思えた。
ガケに向かって進む列車にのっているみたいだった。
で。
そんな自分を変えないといけない、とずっと思った。
行動にうつしたのは、大学一年の秋くらいだったな。
近くにコンビニがあって、そこでアルバイトをしてみようと思った。
怖かったよ。
それは、まさに自ら組織に所属しにいくってことだったから。
あの、高校生活みたく、
ここでも浮いてしまったらどうしよう。
皆に嫌われていじめられたらどうしよう。
自分の変な部分が、暴露されてしまったらどうしよう。
不安。恐怖でいっぱい。
でも、それでも、ここで何か行動しないと自分は変わらない。
将来も変わらない。
生きていくために、自分をなんとかしないといけないと思った。
社会に適応できるように矯正していかないといけないと思った。
ただ、、、
コンビニでバイトしよう、さあ、電話だ!
なんて勇気はすぐにはでなくて。
で、コンビニを外から偵察してみた。
どんな人が店長で、どんな人がアルバイトしているのか。
うん、悪い人たちではなさそう、怖そうな人もいない。
これを何日間がやったな。
そのうえで、ここでならアルバイトしてもいいのかもしれないと思った。
ついにバイトしたい旨の電話をしようと決心するまで、何日もかかったと思う。
電話をするときはね、
狭いアパートの畳の上に携帯電話をおいてね、
その前に正座をしてね、
深呼吸して、
それでも、電話をもつ手が震えた。
あとで後悔したらどうしよう。
まずは長期のアルバイトじゃなくて、短期から始めるべきなんじゃないか。
アルバイトを始めることで、また大きな悩みを抱えてしまうかもしれない。
いじめられたらどうしよう。
そういう不安が頭の中をぐるぐるぐるぐる渦巻いて、
それでも、振り切るようにして意を決して、電話をした。
あのときの、自分の勇気をぼくは讃えたい気がするんです。
怖かったよな。
不安だったよな。
よく勇気を出せたよね。
本当に素晴らしいよ。
結果的にね、
アルバイト先の人たちはみんないい人たちで。
店長もスタッフも。
もちろん傷つくこともあったけど、
ぼくはここで、集団の中で上手くやっていける自分っていうのを発見した。
働く場所においてならば、自分の真面目さは評価してもらえるらしい。
上の人のいうことを、素早く的確にこなすことは得意らしい。
依然として、雑談は苦手なままだったけど、
仕事をしつつなら、無言であっても、仕事に集中しているんだ、っていうことで言い訳がたったし、そこまで、気にならなかった。
それに、店長やら、上の先輩が、ぼくを気にかけてくれて。
とても優しかった。受入れてくれた。
そのことが、何よりも、嬉しいことだったし、
組織に所属しても大丈夫かも、っていう自信になった。
結果、ぼくは、大学に入学してから、大学院を卒業するまで、
そこで6年間、アルバイトをすることになった。
あのアルバイト先の存在、スタッフの人たちには今でも感謝。
そして、そのバイト先をみつけた自分、バイトを始める勇気を出せた自分にも感謝。
震える手で携帯電話をもったあの日。
あれは、自分の人生のターニングポイントの1つだと思う。
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