[エンジニア時代]一番つらかった体験。チームの中で孤立する。

これは僕がエンジニアとして働いていたときの話です。

社会人になって5~6年。

仕事にも慣れ、少しずつ自信を持ち始めていたとき、
僕は人生で最大の挫折を経験します。

それは、ある先輩と一緒に仕事をしたときに
起きました。

■本記事のキーパーソン。優秀な先輩。

その先輩は、
エンジニアに必要な能力はもちろん、
人格さえも備えたパーフェクトな人に見えました。

・技術力
幅広くて深い専門知識をもっている。

・コミュニケーション能力
いろいろな部門とのめんどうな調整作業もサラリとこなせる。
話すときも理路整然と話し、分かりやすい。

・人間性
自分より立場が下にあたる人(後輩や下請け会社の人など)にも偉ぶらない。
いつもニコニコしていて、冷静沈着。物腰も柔らかい。

もちろん、周囲からの評価もとても高く、

僕も、将来的にこうしたエンジニアに成長していきたい、
と思うほどに、尊敬していました。

■先輩と一緒にある案件を担当。メインは僕で、先輩はアドバイザー。

僕は、その先輩と一緒にタッグを組んで、
ある案件を担当することになりました。

役割分担は、
メインの作業を僕が。

他の案件も抱えている先輩は、
アドバイザー的な立場で、
僕が困ったときに支援してくれることに。

 

僕は、信頼できる先輩がついてくれることで安心し、
俄然、やる気が湧いてきました。

困ったら相談すればいいんだ。
よし、全力でがんばるぞ!と。

 

そのとき、社会人生活の6年目くらい。

ある程度のことなら自分でこなせると、
自信を持ち始めていたときで、

上司からも十分な評価を得ていました。

■チームをまとめるという初めての課題。

ただ新しい案件にとりかかるにあたり、
一つ、懸念がありました。

 

それは、チームのリーダーとして、
下請け会社の人や、年上の人を含む、
約5~6人くらいのメンバーをまとめていく必要があること。

これまでの案件では、先輩から仕事をふられ、
基本的には自分一人で、それをこなせばよかった。

でも今回は、僕が指示を出し、
人を動かしていかないと、いけなかったんです。

 

それでも最初は、
気楽に構えていました。

なんとかなるだろうと。

これまでの仕事もうまくいっていたし、
自分ならできるだろうと。

 

しかし。

■チームがまともに機能しない。開発スケジュールが遅れる。

コントロールできないんです。
チームのメンバーを。

 

チームにはこんな人たちがいました。

指示を出しても、作業の期限を平気で破る。
作業の不備を指摘すると、逆ギレする。
その場を乗り切るために、ウソをつく。

僕はこうした人たちよりも年下で、
早い話が、なめられていたんだと思います。

やってらんねーよと思ったのが正直なところです。

これは仕事ができる、できない以前の人間性の問題。

僕は、その不誠実な態度に
殴りつけてやりたいような猛烈な怒りを感じながらも、

「怒っちゃダメだ。皆と上手くやらないと。」
と必死に自分の心を抑え込みました。

それにチームのリーダーである僕が怒りを爆発させたとして、
その結果、メンバーに作業してもらえなくなったら、困るのは僕。

だから、なんとか下手に出て、機嫌をとり、
依頼した作業をやってもらおうとします。

 

この、くだらなさ。

なんで、自分がご機嫌とりをしないといけないんだ。
なんで、こんな人に自分の時間と労力を使わないといけないんだ。

そんな、現状に対する苛立ち、不満ばかりが頭の中に渦巻く。

 

上司は状況を知っても、
「まあ、うまくやってくれ」という態度。

そう、僕に求められていたのは、
こうした人たちを、うまく手の平で転がし、
機嫌よく作業してもらうことだったんです。

 

でも僕にはそれができなかった。

 

メンバーにお願いした作業は遅々として進まず、
開発スケジュールは当初の予定からずるずると遅れていきました。

■見かねた先輩が僕に代わりチームを回す。僕の存在は希薄となり孤立する。

ここで、いよいよ状況を見かねた先輩が、
案件のフォローに入ってくれたんですが、

それはフォローなんてものではなく。

 

先輩は、「まるで僕がいないかのように」、
チームを回し始めました。

 

僕と協力して作業するより、

自分一人で処理した方が
意思疎通の手間が省けてよいと思ったのだと思います。

 

問題を抱えていたチームのメンバーも、
早々に懐柔して手なずけ、作業をしてもらい。

他の部署とのやりとりや調整もテキパキとこなし、
開発スケジュールの遅れをどんどん回復していく。

 

あるとき、僕はせめて自分にできることをしようと、
先輩と僕の二人あてにきたメールに対して、
先輩に代わり返信をしておきました。

すると先輩は、

「宛先に僕が入っているメールは返信しなくていいよ。
僕がするから。」

と。

僕はよかれと思ってしたんですが、
そのメールの回答内容も先輩からすると不十分で、

余計なことはしなくていい、かえって迷惑だと
言いたかったのだと思います。

 

こうして僕は、
チームのリーダーであるにも関わらず、
作業がほとんど何もない状態になり、

チーム内で孤立しました。

■垣間見えた先輩のネガティブな一面。

スケジュールの遅れを僕に代わってリカバリーしようとする先輩は、
話しかけてくれるな、というオーラをまとっていた。

「おまえのせいで、自分の業務が増えている」
「おまえは要らない」

決して口には出さないけれど、
先輩の態度は、僕にそう言っているように感じられた。

 

優しくて、いつもニコニコしていて、、、
その人間性を尊敬していた先輩。

その笑顔の裏に隠されていたネガティブな一面に、
僕は驚くと同時に、とても冷たいものを感じました。

■傷ついた僕のプライド。

自分の存在が無視されているような状況で、僕の心に湧き上がる感情。

それは、自分に代わりチームを回してくれている先輩に対する「感謝」ではなく、
こんなものでした。

自分にならできると思っていた仕事を
上手にこなすことができなかった無力感。落胆の思い。悔しさ。

先輩の手を煩わせて
迷惑をかけてしまっている罪悪感。申し訳なさ。情けなさ。

チームの中で自分にだけ
まともな仕事がない孤独感。寂しさ。悲しさ。

 

孤立して机に座っていると、
周囲から「おまえは役に立たない」って言われているようで、
悲しくて泣きたい気持ちになりました。

そして、自分でも自分のことを
「なんて役立たずなんだろう」と責め続ける。

仕事をまともにこなすことのできない自分に
生きている意味があるんだろうか、とさえ思い、
絶望的な気持ちにもなりました。

 

先輩に直接、聞いてみたこともあったんです。
僕の仕事のやり方の問題点を。

でも、

先輩の答えはひどく抽象的で、ぼんやりとしたもので、
その言葉は、「僕に対する諦め」、のように聞こえました。

そのことがまた、自分にはいよいよ存在価値がないのだ、
との思いを強めることになった。

 

その後、自責の念がどんどん強くなり、
気持ちも追い詰められていって、
精神科へ相談に行きました。

ただ病名はつかず、
簡単な薬を処方してもらうだけでした。

 

最終的に。

開発スケジュールが軌道にのったところで、
先輩は再度、案件を私に任せ、別の作業に移りました。

こうして、僕にまたもとの仕事が戻ってきて、
その後はチームのメンバーとも何とか折り合いをつけることができ、
僕の苦しい日々は終わりました。

 

これが、僕のエンジニア人生の中で、
もっとも辛かった出来事の一部始終です。

■結局、どうすればよかったんだろうか。

今回の僕の挫折体験には2つのポイントがある。

・メンバーに恵まれず、うまくチームを回せなかった。
・先輩が僕に代わりチームを回したことで、自分の存在が希薄化し孤立した。

 

前者は、チームのメンバーの変更を
上司に強くかけあっても、よかったかもしれない。
(おそらく上司は、聞いてくれなかっただろうが。)

また、自分も経験を積み重ねれば、
先輩のごとく、どんなに不誠実な人を相手にしても
懐柔して上手いこと転がせるようになるのかもしれない。

 

後者について、まず先輩の行動に間違っている点はないと思う。
問題は、僕自身が、「自分の存在を無視されている」ように感じ、
落ち込み、精神状態をずるずると悪化させてしまった点にある。

でも実際は、落ち込む必要はなくて、
僕に代わって仕事をこなしてくれる先輩にただ感謝し、
その先輩の行動をみて自分に活かせる何かを学べば、それでよかったんじゃないかと思う。

尻拭いをさせられている先輩が、たとえ僕に苛立ちを感じていようとも。

無責任に聞こえるかもしれないけど、
仕事をするうえで、自分がやれるだけやって、できないのなら、それは仕方のないこと。

落ち込んだり、自分を責めるよりも、
さっさと諦めて、助けてくれそうな人にSOSを出す。
そして助けてくれた人に感謝する。

組織で仕事をしている以上、それで十分なんだと思う、きっと。

fin

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