「成瀬は天下を取りにいく」(宮島未奈著)がもうずっと話題になっている。本屋大賞の他、いくつも賞をとったり、帯にめっちゃたくさんの有名な芸能人のコメントがかかれていたり、新潮社を救った本だとささやかれたり、とかく、話題にことかかかない。流行につられて本を読むのは好きじゃない自分なのだけど、今回ばかりは手にとってしまった。文芸書でここまで騒がれるって、そんなに面白いのか。ニュースター成瀬とは何者なんだ。そんな好奇心をついに抑えきれずに。まあ、今、地方の実習に一人できていて、時間に余裕があるっていうのもあるんだけどね。
ただ。
ぼくはあんまり、面白さがよくわからなかった。そこまで騒ぐほどのものなのか?っていうのが正直な感想。確かに、成瀬は奇抜で突拍子もないから、次に何をしでかすんだろう、って思う。だから、その好奇心でもって、最初から最後まで一気に読ませる力はある。文芸書の世界では、この「最初から最後まで読ませる」ってのがすごいことだと思うけど、それ以上の感動はないような気がしたな。ライトなエンタメという感じ。。
成瀬がニュースターかと言われると、それも?という感じ。ADHDとか、ASDとか、そういう名前がつくんじゃないか。人の視線とか、人にどう思われるか、とかに無頓着で、自分のやりたいことに執着して曲げない。それが、人間関係に苦労していたり、社会人でやりたくないことをさせられていたりする人には、確かに痛快なのだろうと思う。けど、なんだか成瀬本人の深みを感じないんだよね。。心の葛藤というのかな。成瀬は、いろんなことを考えて行動にうつして、それを成功させてしまうのだけど、それができるのは、もともと頭がよかったり、才能があったりするから。そこに努力や苦労がない。本に描かれていない。だから自分は成瀬にそこまでの魅力を感じることができず、物足りなく感じてしまう。もっと人間としての深みを感じたい。最後の章で、仲のよい友人が大学進学にあわせて東京へ行くことになり、成瀬は勉強も手に付かないほど同様する。でも、それも、彼女のキャラクターを考えるとよく分からない。そんなに激しく動揺するのなら、ふだんの言動にも、もう少し感情がのってもいいんじゃないか、と思っちゃう。
うーん。これは、本自体がすごい、というより新潮社の本の売り方が上手なのかな、って思っちゃうな。メディアをまきこんで、めちゃくちゃすごい本と思わせることに成功したというか。
SNSでも、社会人になっても、アピールの上手な人が人気を得たり、友達をたくさん作ったり、お金を稼いだりする。もちろんアピールが上手、っていうのも、大事な能力。ただ、そこに実質がともなっているかが大事だと思いません?
これをアピール下手なぼくがいうのは、負け惜しみ以外の何物でもない。自分を巧みに売り込んで、欲しいものをがしがしゲットしていく人をみると羨ましくてしょうがねえ。自分だって、お金がほしいさ。いい女がほしい。いい車がほしい。楽しい友人がほしい。それを得ている人が羨ましい。
ただ、アピールが上手でキラキラしている人たちをみて、思い出す言葉が一つ。日本橋ヨヲコ先生の漫画、プラスチック解体高校より。
「本物であるほど、光り方は鈍いものですよ。」
この言葉を噛みしめるのです。この言葉が地に足をつけさせてくれるのです。
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